震度7でも倒壊しない耐震住宅の基準と地盤・設計・施工について

2024年1月1日に発生した能登半島地震は、耐震住宅の必要性を改めて私たちに思い起こさせました。
新築住宅における「耐震」の基準と機能は、今や欠かせない要素となっています。
ここでは耐震住宅の基準と機能についてわかりやすく解説し、その取り組み方についてご紹介します。

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地震と耐震等級の関係性

耐震等級という言葉をご存知かと思いますが、簡単に言うと建物が地震に耐える基準の事になります。
耐震等級は1から3まであり、2000年の建築基準法に基づいて、新築住宅には最低限の耐震等級1が義務付けられています。
耐震等級2は、等級1に比べて約1.25倍の耐震性を持ち、学校や病院などの避難施設と同等の強度を誇ります。
さらに上をいく耐震等級3は、等級1に比べ1.5倍の強度があり、消防署や警察署といった緊急時の基盤施設に匹敵します。

耐震等級のレベル

2016年4月に発生した熊本地震では、震度7の地震が2度観測され、一部損壊を含めれば、19万棟の建物被害がありました。
その熊本地震におけるデータを見ると、耐震等級による建物の被害状況には明確な違いがありました。

耐震等級1を満たす住宅は、それ以前の基準に則って建てられたものと比べて被害率が低く、等級3の住宅ではほとんど被害が確認されなかったのです。

このことから、耐震等級3での住宅建築は、家族と家の安全を確保する上で有効であるといえます。

建築業界でよく聞く「人を守るだけなら耐震等級1、人も建物も守るなら耐震等級3」という言葉がありますが、しっかり裏付けされた言葉の様です。

耐震等級には認定が必要

耐震等級2以上を実現するためには、構造設計士の計算と住宅性能評価機関の認定が不可欠です。 「耐震等級〇相当」と表現されている場合、これは構造計算と認定を受けていないので、あくまでも耐震等級1であるという点にご注意ください。

耐震住宅の全体像を理解するため、次章ではそのメリットとデメリットを掘り下げていきます。

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耐震住宅の
メリット・デメリット

2-1.耐震住宅のデメリット

耐震住宅のデメリット

耐震住宅を取り入れる際には、確かにいくつかのデメリットがありますが、これらは耐震性を高めるための投資と捉えることができます。
最も顕著なデメリットはコストの増加です。
高い耐震性能を持たせるためには、専門的な構造計算が必要となり、それに伴う費用が発生します。 耐震等級を高めるために使用する部材も耐震等級1に比べて多くなり、それによりコストが上昇します。
基礎鉄筋、ホールダウン、柱、筋交い、構造用合板などの部材がこれに該当します。

特に、北陸のような積雪地域では、積雪荷重を考慮したより強固な構造が必要になるため、建築コストはさらに高くなります。
「雪ぐらいでそんなに変わるの?」と思うかもしれませんが、20坪の屋根に1.5メートルの積雪があれば、その重さは約45トンにもなるため、この重量を支える構造にはそれ相応の強度が求められます。
想像できない気が遠くなる重さですよね?

また、耐震性を高めるための構造的要件によっては、間取りに一定の制限が発生する可能性があります。
例えば、広いLDK空間を作るためには、強度確保のために追加の壁や柱が必要になることもあります。これにより、デザインの自由度が影響を受ける場合があります。

しかし、これらのデメリットは、地震という予期せぬ災害から家族と家を守るための必要な措置ととらえていくことが必要です。

2-2.耐震住宅のメリット

耐震住宅のメリット

耐震住宅が提供する主要なメリットは、「安全性」「安心感」です。
これは、過去の熊本地震や能登半島地震の事例を見ても明らかです。
これらの地震で、耐震住宅は最小限のダメージを受けるだけで、家屋の安全と住民の命を守る役割を果たしました。

2024年元旦に発生した能登半島地震でも分かりましたが、建物が半壊以上の損害ランクの場合、地震保険から支払われる保険金で修繕費はすべて賄うことはできず、費用負担は発生します。
地震後修繕することよりも、耐震住宅で備えをしていた方が、確実に割安に済みます。

また、地震保険における割引も大きな利点です。
耐震等級が高い家は、保険料が大幅に割引されることがあり、耐震等級2では30%、耐震等級3では50%の割引を受けることができます。 これは、長期的な住宅のコストを考慮すると、非常に有益な節約につながります。

次に、住宅ローンの金利に関してもメリットがあります。
耐震性が高い住宅は金利優遇を受けることができ、特に固定金利フラット35Sを利用する場合、金利が0.25~0.5%低くなることもあります。

さらに、高い住宅性能を持つ耐震住宅は、資産価値の減少が遅いという利点もあります。
日本では住宅の価値は「20年で0円」という扱いになりますが、耐震性能が高い住宅は、その傾向が緩やかになります。 国もこのような性能の高い住宅を支援する政策を推進しています。

これらの要点を踏まえると耐震住宅への投資は、将来的な災害からの保護、経済的な節約、そして不動産としての価値維持のために非常に賢明な選択です。

これらのメリット・デメリットもふまえ、アイラシックホームがおすすめする耐震住宅について、この後ご案内します。

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アイラシックホームの
耐震住宅とは

アイラシックホームにおいては、耐震性能を家造りの根幹に据えています。
私たちにとって、お客様の「安全と安心」が最優先であり、その上に快適性や経済性が成り立つと考えております。
この信念のもと、スーパーウォール工法を用いた建築を採用しています。

スーパーウォール工法とは

一般的な在来工法では、柱や梁、筋交いを中心に骨組みをする「点と線」で支えている構造になりますが、スーパーウォール工法によるモノコック構造は、壁・床・天井を「面」で取り囲み一体化させ、家全体を強固な箱のように囲むことで、外部からの力に対して接合部にストレスが集中することなく、力を全体に分散させ、ひずみやくるいに強さを発揮します。

これは、地震や台風などの自然災害に対する強さを向上させるのに重要です。 住宅の耐震性能を高めるためには、体力壁をバランスよく配置することが大変重要になってきます。

スーパーウォールパネルは、高耐力の構造用パーティクルボードと断熱材を一体化し、壁倍率4.3倍を作り出せるため、建物に効率よく耐力壁を配置することができ、建物の耐震性能を最大限に高めます。

壁倍率とは、建築基準法で定められた壁(耐震壁)の強さをあらわす数値です。壁倍率が大きいほど、耐力が大きい証です。

また、私たちは住宅の基本設計において、可能な限り正方形に近いシンプルな形状を推奨しています。
これにより、壁にかかる力が均等になり、より耐震性の高い構造を実現できるからです。
凸凹な家でも耐震等級3は取得できますが、正方形に近い家の方がコストを少なく耐震等級3を取得しやすくできます。

凹凸な家のイメージ
凹凸な家のイメージ画像
正方形に近いシンプルな家のイメージ
正方形に近いシンプルな家のイメージ画像

加えて、軽量かつ強度のある屋根材の選択にも注力しており、多くのお客様が太陽光発電システムを導入されている現状を踏まえ、ガルバニウム鋼板の屋根を提案しています。
瓦の約1/10の重さで、耐震性の向上に寄与するだけでなく、その耐久性も高いためです。

ガルバニウム鋼板の屋根の画像ガルバニウム鋼板の屋根
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耐震住宅・耐震基準に
必要な要素

アイラシックホームは、耐震等級3の住宅を基本としてお客様に推奨していますが、私たちはこれだけでは不十分と考えています。
最近の地震は余震が続く傾向にあり、過去に起こった熊本地震や能登半島地震、そして台湾地震など、余震が長期的に続く事例が多いためです。
このような状況を踏まえ、弊社は「耐震」に加えて「制震」が必要不可欠と考えています。

制震は、地震による建物の揺れを吸収、揺れ幅を小さくし、建物本体のダメージを低減する技術です。
「制震」ではダンパーが有名ですが、弊社では制震テープを採用しております。

制震テープとは

制震テープは、元々高層ビル用に開発された高性能な粘弾性体を使用したもので、耐用年数が110年を超え、環境にも強いという利点と実績があります。
住宅全面にこの制震テープを施工することで、家そのものが制震構造となり、「耐震+制震」の住宅にすることが可能になります。

下記の動画では、制震テープの有り・無しで揺れに対する実験を行っている映像をご覧になれます。

制震テープを動画で詳しく見る

※外部サイト(YouTube)に移動します。

この「耐震+制震」構造により、大きな地震やその後に継続する余震に対しても、耐えることができると考えております。

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地盤・土壌に求められること

住宅の耐震性能と同様に、地盤の強度も非常に重要です。
建物が「耐震等級3+制震構造」など、いかに耐震性を備えていたとしても、基礎となる地盤が不安定だと液状化現象により建物は倒壊するか、大きく傾くリスクがあります。

そもそも「地盤が弱い」とはどういう意味でしょう?

「地盤が弱い=地盤が柔らかい」と言えます。
地盤が弱い、すなわち地盤が柔らかい場合、大地震の際に地下水を含む砂地盤が液体のようになり、土地が沈下するとともに家は傾いてしまいます。

液状化した道路の写真液状化した道路
液状化して沈下するまでのイメージ画像

液状化しやすい地盤とは

液状化は、
50~60年前に造成された比較的新しい土地
もともと沼や池であった土地
自然堤防や旧河道や大河川の沿岸
など、水分を多く含む低地で特に起こりやすいと言われています。

液状化しやすい地盤図

液状化により傾いた住宅を修復するには、数百万円以上という莫大なコストがかかり、完全な修復が難しい場合もあります。
そのため、新しい土地を探す際には、地盤の強さを重要な選定基準に含めることを推奨します。

液状化リスクのある地盤を避けることは、長期的な安全と快適な居住のためには不可欠です。

アイラシックホームは土地探しから一緒に考えます!

アイラシックホームでは、土地探しのサポートも提供しています。
不動産会社と連携して、建築的な観点から最適な土地選びのアドバイスを行っています。
また、既存の土地で地盤が弱く低地などの場合には、擁壁や高基礎などの解決策を提案し、必要に応じて信頼できる地盤改良会社と、最適な工法で地盤改良を行うことをお勧めしています。

これは地震や水害からのリスクを軽減し、お客様に長く安心して快適に生活して頂くために大切にしています。

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補助金や長期優良住宅について

耐震等級3に加え、私たちの住宅業界では「長期優良住宅」の普及が注目されています。
長期優良住宅とは「長期にわたり良好な状態で使用するために措置が講じられた優良住宅」のことを言います。
長期優良住宅を弊社なり具体的にまとめると、「安全で快適な家をメンテナンスしやすくすることで、何代にも渡って住み続けることを可能にすると同時に、建物自体の資産価値の低下を防ぐ」となります。 

長期優良住宅の「主な認定基準」は、

  1. 耐震性
  2. 省エネルギー対策
  3. 維持管理・更新の容易性
  4. 劣化対策
  5. 住戸面積
  6. 居住環境
  7. 災害配慮
  8. 維持保全計画

などが含まれ、これらの基準を満たし、行政庁への申請を通じて認定が受けられます。

何代にも渡って住み続けられる長期優良住宅

また2022年10月より、長期優良住宅の制度改正が行われました。

改定前~2022年9月 改定後2022年10月~
耐震性のアイコン耐震性
耐震等級等級2以上
耐震等級等級3
省エネ性のアイコン省エネ性
断熱等性能等級等級4
断熱等性能等級等級5
一次エネルギー消費量等級等級6
メンテナンス性のアイコンメンテナンス性
維持管理対策等級等級3
耐久性のアイコン耐久性
劣化対策等級等級3

大きな変化としては、 【耐震性】耐震等級が2以上から3になったことと、【省エネ性】断熱等性能等級が4から5になったことに加え、「一次エネルギー消費量等級6」が追加となりました。

これは、住宅の耐震性と断熱性能をさらに上げなさいという国からの強いメッセージでもあります。

長期優良のメリット

長期優良のメリットは以下の4項目です。

  • 1

    住宅ローン控除
    長期優良住宅を選択することで住宅ローン控除が最大限になります。
    逆に一般住宅では2024年からは控除額0円になります。

新築住宅の住宅ローン控除の最大控除額
項目 2021年入居 2022年・2023年入居 2024年・2025年入居
認定長期優良住宅 500万円 455万円 409.5万円
ZEH対象 一般住宅 400万円 409.5万円 318.5万円
省エネ基準適合住宅 400万円 364万円 273万円
一般住宅 400万円 273万円(21万円×13年) 0円

※控除率:0.7% ※控除期間:13年 ※2023年12月時点のデータ

  • 2

    住宅ローンの金利引き下げ
    こちらは耐震等級3と同様で、フラット35Sの場合に金利引き下げ対象となります。

期間 プラン 引き下げ率
当初5年間 フラット35S(金利Aプラン)および維持保全型 年0.25%引き下げ
6年から10年目 フラット35S(金利Aプラン)および維持保全型 年0.5%引き下げ
  • 3

    その他の税制優遇
    固定資産税は1/2減額の減税措置が行われますが、一般住宅だと1~3年に対して、長期優良住宅では1~7年の減税期間となります。また不動産所得税の控除も、一般住宅だと1200万円に対して、長期優良住宅では100万円多い1300万円の控除額となります。

税種 一般住宅 長期優良住宅
固定資産税 減税期間 1~3年間 減税期間 1~7年間
不動産取得税 控除額 1,200万円 控除額 1,300万円
  • 4

    地震保険割引
    耐震等級3取得時と同様になります。

特典種類 特典内容
地震保険料割引 耐震等級2で30%、耐震等級3で50%割引

税制優遇の面から見ても、国はこれから建てる住宅は長期優良住宅にしてほしいと考えています。

長期優良住宅について

先ほども触れましたが、現在の日本の建物の不動産価値は「20年で0円」です。
欧米では逆に古い家ほど価値が上がり、高値で売買されます。これでは国富に差が出てくる一方です。
「人口が増えている」「構造が石造りで長持ち」「湿気の少ない気候」など、考え方や環境の違いはあるにせよ、これから建てる優良な住宅には、資産価値が上昇しないまでも下落は抑えていきたいと考えています。

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最後に

長期優良住宅にすることで、所有者は「住宅ローンの引き下げ」「税制優遇」「地震保険の割引」のメリットがあることはお伝えしました。
しかし、このメリットが最もあるのは所有者であるあなたではありません。その建物を引き継いだ大切なご家族になります。

築40年以上の一般住宅を引き継ぐ場合、性能向上を目的とした大型リフォームをするには、1,000万円を超える可能性はとても高くなります。
建物を解体・更地にして売買する場合、解体費用が高騰している昨今、解体費用と売れた土地の金額でほぼトントンなんてケースも珍しくありません。
建物を解体せずに建物+土地で売買しようと思っても、買い手がつくにはかなりの時間がかかると考えます。

築40年以上の長期優良住宅を引き継ぐ場合、リフォーム工事はおそらく数十万円~数百万円で済むことでしょう。

長期優良住宅の売買は、建物を解体せずに建物+土地でも割と早い段階で売買できると思います。

長期優良住宅のまとめ

長期優良住宅を引き継いだ方は相続でも売買でもどちらを選択しても、一般住宅に比べればはるかに受け取る価値は違うものになります。
自分が建てた家をご子息から「引き継ぎたくない」と言われるか、「いい家を建ててくれた」と感謝されるかでは雲泥の差。 実際、日本で起こっている空き家問題は前者が圧倒的に多いから起こっていることでもあります。

長く良質な家を建てるためには、長いスパンで物事を考える必要があります。
どうぞ、これから家を建てる方は、ご自身のメリットだけでなく、その先の受け継ぐ方のことまで考えた家づくりをされることをおすすめ致します。

弊社も今までもこれからも、安全で永く快適に過ごせるお家を地域に建てていきたいと強く願っております。
お客様にはしっかり寄り添い、丁寧にサポートさせて頂きます。