2023.06.22

5~6月の高気密高断熱住宅の特徴

皆様、こんにちわ。

弊社は石川県小松市を拠点に小松市,能美市,加賀市を中心に

「全棟気密検査実施 、 断熱性能UA値=0.34W/(㎡・K)以下 、気密性 C値=0.1c㎡/㎡、耐震等級3の住宅」を設計・施工させて頂いている工務店です。

断熱性・気密性がともに高い住宅では夏前の5~6月には注意が必要です。それは…

「屋内に入った熱は逃げにくい。だから熱がこもりやすい」

ということです(汗)

簡単に言えば高気密高断熱住宅は魔法瓶のような住宅ですから,「家の中の熱を外に逃がさない」ことが特徴になります。当たり前といえば当たり前です。

北陸では5~6月のような日中天気が良く,夕方に気温が低くなる時期には帰宅すると,外の方が涼しいという現象が起こることがあります。

高気密高断熱住宅の熱の侵入先

では,高気密高断熱住宅にも関わらず,どこから熱が入ってくるのか?それは…

「窓」

です。

日射熱が建物内に入って室内温度が高くなり,熱はそのまま外には逃げず,外気が涼しくなった夕方よりも室内の方が温度が高くなってしまうのです。オーバーヒート現象とも言います。

これでは正直快適とはいいがたいです…

高気密高断熱住宅に大切なパッシブ設計

高気密高断熱住宅を建てる際には建築計画中にパッシブ設計も考慮しておくことは必須になります。パッシブ設計とは太陽の熱や光,風などの自然エネルギーを生かして快適な暮らしを実現するための設計になります。

ですので夏前の時期であれば「太陽の日射遮蔽」「通風計画」が主にパッシブ設計のそれにあたります。熱を屋内に入れず,風を多く取り入れる工夫ですね。

夏のパッシブ設計① 建物の南面壁は真南に向けるのが理想

パッシブ設計において建物の配置としては南面壁をできるだけ真南に向けるのが最も理想となります。真南から15°以内であれば理想,30°以内であれば有効となります。

その理由は以下の通りです。

夏はできるだけ日射取得を少なくすることが大切です。建物の南面を真南に計画する場合と比較して,南東に計画する場合は日射取得が16%多くなってしまいます。南西に計画する場合は真南と比較して日射取得が13%多くなります。

また,冬はできるだけ日射取得を多くすることが大切です。建物の南面を真南に計画する場合と比較して,南東に計画する場合は日射取得が12%少なくなってしまいます。南西に計画する場合は真南と比較して日射取得が20%も少なくなってしまいます。

このことから,パッシブ設計において建物の配置は南面壁に対して真南に計画することが夏も冬も同様に理想ということがわかります。

夏のパッシブ設計② 夏の日差しをコントロール

断熱性や気密性が高い住宅ほど熱が入れば溜まりやすくなってきます。

以下のグラフは夏場,太陽の熱を遮る家と遮らない家とで冷房負荷を比較したグラフになります。

太陽を遮る家に対して遮ならい家の冷房負荷は圧倒的に多いことがわかります。これではエアコンの電気代が多くかかってしまいます。ですので,夏は太陽の熱を遮る(日射遮へい)することが非常に大切になってきます。

日射遮へいの住宅設計のポイント

東西南北の窓にはそれぞれ対策が必要になってきます。まず,真夏の真昼の南面の日射高度は約78°と高いため,建物に庇や軒,オーニングを出して遮へいすることが大切です。東西面は朝夕に低い太陽高度のため,外付ブラインド,シェードやすだれで窓全面を覆うと多くの熱を遮ることができます。

シェード

外付ブラインド

オーニング

このお話をすると,「室内にカーテンをすれば日射遮熱できるのでは?」というご質問をよく頂きます。

室内のカーテンと室外のシェードとで太陽の熱をどれだけカットできるか比較した図が以下となります。

やはり,熱は外で遮ることが大切なのがよくわかると思います。

また,「南面に窓を設けなければ熱が入ってこないのでは?」というご質問も頂く場合もございます。

これに関しては冬場は南面から日射をできるだけ行いたいので,おススメしません。冬場の晴れの南面の掃き出し窓から取得できる日射熱は電気ストーブ1台分にもなると言われています。確かに北陸の冬の日射時間は東京と比較すると約1/3と少ないですが,太陽の熱はタダですので,取得しない手はありません。

また,自然採光を取る上でも南面に窓を設けることは有利に働きます。

夏のパッシブ設計③ 通風計画

遮熱対策を行っても100%とはなりません。となると多少は屋内に熱が溜まります。そこで夏前や春秋の朝晩の涼しい風を採り込むことで熱を外に排出して室温を下げることが大切になってきます。

地域の風配図を基に窓の形状や位置を考える

それぞれの地域で風が流れる特性が変わってきます。ですので,その地域の風配図を基に窓の形状や設置位置を考慮していく必要があります。以下は石川県小松市の風配図になります。

この風配図から窓をよく開ける時期である5~7月についての小松市の特性を見てみます。

まず起居時は北~北北西の方角から風が入る可能性が高く,就寝時は南東~南の方角から風が入る可能性が高いことが分かります。これらを基に窓の形状や設置位置を考えていくことが大切です。

もちろん,同じ地域でも立地や近隣の建物の状況で異なりますので,現地視察は重要です。

風の特性を活かす

比重の軽い暖気は上昇して比重の重い冷気は下降していきます。ですので,暖かい風は下から上に上昇します。この特性を踏まえて風を入れるのが重力換気と言います。

ですので,以下のように高天井や吹抜を設計して,高窓や吹抜を設けることで風の通りが非常に良くなることが可能になります。

また,ウインドキャッチという手法もあります。地域の風配図を基に縦すべり出し窓を部屋に2箇所設計し,風をガラスに当てて屋内に入れ外に出し風の通りを良くしていきます。

引き違いの窓と比較すると,縦すべり出し窓でウインドキャッチする方が採風はなんと10倍になります。

また風の入り口を小さくして,出口を大きくすることで採風も大きくなります。

上記のイメージのように夏前や春秋は特に風が良く通る住宅設計が理想ですね。

まとめ

本当の高気密高断熱住宅を建てる場合,同時に自然エネルギーを最大限に活かすパッシブ設計を考慮していくことがマストになってきます。そうすることで夏前からエアコンなどを多用する必要がなく,自然エネルギーだけで快適に過ごすことができます。

今回も最後までお読みくださりありがとうございました。ご不明点や相談がございましたら,お問合せフォームからお気軽にご連絡ください。